ギリシア語で「月桂樹」のことを"ダプネー [daphne] "と呼ぶらしい。
もちろんそれは意味のあることでした。
ギリシア神話より
"太陽神"として有名なアポロンはある日、エロースに出会う。
アポロンはエロースの持つ小さくて貧弱な弓矢を嘲笑った。
エロースは笑われたことに腹をたて、アポロンを金の矢で、
たまたまアポロンの前にいた美しい女性、ダプネーを鉛の矢で撃った。
エロースの持つ弓矢は2種類、
金で出来た矢に射られた者は激しい愛情にとりつかれ、
これに当たると恋に焦がれてどうにもならなくなってしまう。
もうひとつ、
鉛で出来た矢に射られた者は恋を嫌悪するように、
これに当たるとどう愛されても相手を好きになれない。
元々ダプネーはまだ幼く、色恋いに興味を持つ年ではなかったが、
あまりの美しさで求婚の申し込みが後を絶たない。
アポロンは抑えきれない愛情とジェラシーに駆られ、
自分のものにしようと必要以上に彼女を追い回し、
一方、ダプネーはひたすら訳も解らず激しく拒絶した。
いよいよアポロンに追いつめられて逃げ場がなくなったとき、
ダプネーは父にこう頼んだ。
「助けて、どんな姿になってもいいから…」
するとたちまち
彼女の髪は緑の葉となり、
腕はそのまま木の枝となり、
足は根となり…
やがてその身はすべて月桂樹となってしまった。
ようやく捕まえたダプネーが月桂樹に…
アポロンはその樹を抱きしめ泣き伏せた。
悲哀というか、今ならストーカーみたいな話ですね。
英雄アポロンの聖樹として祭られる月桂樹、
古代ギリシアではその葉で「月桂冠」をつくり、
勝利と栄光のシンボルとして勝者や優秀な者たちの頭にかぶせました。
花言葉の「栄光」「勝利」「栄誉」もこれに由来します。
いまでもオリンピックやマラソンの表彰式で見かけますよね。
しかし一方ではこんなストーカーチックなエピソードも残されていたのです。
最後に。
月桂樹の葉言葉は「私は死ぬまで変わりません」。
ダプネーの気持ちの強さが表れていることがわかります。
”頑固なまでに寄せつけない、死しても変わらない”という重さ、
すこしだけ解ったような気がします。